会う

昨日、ポレポレに『ピラニア』を観に行く。試写で観ていたんだけど、試写と言っても会議室のテレビでの試写だったのでよくわからず、昨日ようやく全貌をつかめた。魚にとって水は必須の「環境」であるけれど、あの池の水はピラニアたちにとって死をもたらす。そこになにか越えがたい哀しさを感じる。自分の意志と無関係に「そこで生きろ」と命じられた存在、というか。吉岡睦雄と白井みなみは、そういう意味でのピラニアだったのではないか? 一度目に中途半端な形で観た『ピラニア』で不満に感じていたのは、主人公たちの凶暴さが物足りないという点だったけれど、ようやく昨夜タイトルの目指すところが見えたような気がした。
終映後、打ち上げに参加。その帰り。柴田剛監督と女優のほたるさんと、東中野のホームで電車を待っていたら、ほたるさんに声をかける二人組の男女。渋さ知らずのダンサー。ほたるさんの知り合いだった。で一緒に帰ることになったんだけど、柴田君が俺のことを「古澤良治郎さんの息子」と、その二人に紹介したら、「え、良治郎さん、僕らのアパートの下に住んでます」という思いがけない答え。笑ってしまった。せっかくなので、西荻でその二人と柴田君と飲み直した。

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学生残酷映画祭と時をかける少女

日曜日、12日は阿佐ヶ谷ロフトで学生残酷映画祭が開催された。去年に引き続き、なぜか審査員として参加。タコシェ伊東美和さんも続投。今年はジャンクハンター吉田さんと高橋ヨシキさんも参加。はっきり言ってレベルの高い映画ばかりだった。当たり前だ。残酷描写があることが参加条件。そんな映画を撮ろうと思った時点でハードルは高い。ぼんやりカメラ回してるだけじゃ撮れない映画ばかり。『女子高生のはらわた』『FRIEND IS THE DEAD』『魔眼』のいずれかがグランプリじゃないかと審査員一同悩んだが、いずれの作品にも一長一短があり、はっきり言うと飛び抜けた作品はなかった。どれも技術的に素晴らしいんだけど、やはり「映画っぽさ」に安住しているように感じてしまった。「……該当作なし、でいいんじゃないか。簡単にグランプリをやるような気楽な映画祭じゃないんだよ、学生残酷映画祭は!」と一同盛り上がって、壇上でそう発表したのだが、当の主催者は話しあいの場にはいなかったので、ギョッとしていた。ごめんね。でも来年もまた続けて欲しいし、もっともっと素敵な映画祭にして欲しい。たぶん来年あたり、人気俳優が俳優をやめて監督宣言して本名で応募してきたりするよ。
打ち上げのあと、時計を見たらまだ七時だったので、八丁堀の七針へ。mmmのライブ。先日のライブがあまりに素晴らしかったのでドキドキしながら行った。しかしこちらの期待や不安をはるかに上回る、感動的なライブだった。とっくに知っていることだったけど、mmmという人は自分で作った曲を、幾通りにも解釈できてしまう。自分の歌を、わかったつもりにならない。バンド編成でのライブだったから、当然先日のソロとは違うんだけど、声と表情すべてが歓喜にあふれるライブだった。「マジカル・オムニブス号」のあの多幸感ったら!(先日の同曲は、その多幸感を追憶として歌うような印象だった)。
そして個人的にはカバー曲の「時をかける少女」。ドラムの下田温泉さんの、ニコニコと嬉しそうに叩いている表情を見ていたら、10年以上前に下田さんのアパートで昼間から焼酎を飲みながら話したときのことが場面として思い浮かんだ。そのときに話したことを今でもおぼえているけど、それとは別のことを思った。そのときの僕らはmmmなんて歌手と将来出会うことは想像していなかった。僕らが酔っ払っていたその頃、mmmはたぶんまだ小学生か中学生で、彼女だってこんなおっさんたちと将来知りあうなんて思っていなかっただろうな。なんてことを、「時をかける少女」を歌うmmmの歌声とバンドの音が妄想させて、感傷的になってしまったのだった。

i love u too

昨日のこと。
昼から早稲田で松江監督と打ち合わせ。20日に登壇するイベントについて。帰り道、二人で近況を話し、盛り上がる。頑張ろう。
夕方、美学校で打ち合わせ。こっちも盛り上がる。でも大変そう。頑張ろう。
帰ろうとして、「あ、そういえば」と思い出して、7thフロアへ向かう。mmm、麓健一シャロン・ヴァン・エッテンのライブ。案内メールはもらってたけど、行けるかどうかわからなくて、でも結局ちょうど開演にまにあった。麓健一、クリスマスの歌、素敵。町中にあの歌が流れるのを夢想する。mmm、最近のライブではベストアクト。昨日聴けなかった人は激しく後悔すべき。昨日のmmmは前半いろんな風になって吹きすさび、後半まるで獣のようにエモーショナルだった。「あまのじゃく」は震えが来た。シャロンがコーラスで参加した「アドア」も、もうここにはいない小さな犬がステージの上を走っていた。シャロン・ヴァン・エッテン、実は知らなくて初めて歌を聴いたんだけど、この人も風のような人だった。砂埃舞うどこかから、一人の声なのに複数の声で届く。一曲だけピアノの弾き語りだったけど、終わってからもずっと「I couldn't save you」という歌詞が耳から離れなかった。そんな彼女がMCで、「mmm,i love you.コンニチワ、モエ」と言ったとき、客席からmmmが「i love u too」と返した。そのかすかなやりとりが、とても印象的な夜だった。

泥の惑星

昨日はユーロスペース井土紀州監督の『泥の惑星』上映後に、監督と向井康介君と三人でトーク。他のお客さんと一緒に作品を鑑賞。客席からそのまま壇上にあがったんだけど、まだちょっと涙ぐんでいた。
小さな若者たちが、自分の見ている範囲だけが世界のすべてだと思い込んでいる。でも薄々と自分の外側にもっと大きな、把握しきれない世界が広がっているのを感じて、期待と不安に魂を震わせている。それが悲鳴のようなサックスの音色とともに描かれる。いまあの子たちがキスしていることを、レンコンを引っこ抜いているあの子たちは知らないし、教室で他愛ないお喋りに興ずるあの子たちは、自分たちの真上の屋上で今まさに自殺しようとしているあの子のことを知らない。お互いがお互いのことを知らない。哀しくなるのは、現在進行形では決して世界は見渡せないということだ。『泥の惑星』は彼らの愚かしさを、編集というテクニックによって見渡してみせる(が批判はしない。人はその愚かしさとともにしか生きられないから)。生身の人間がそれを出来るのは、いつでもその出来事から遠く離れたときのことだ。だから『泥の惑星』は、映画が夢や追憶に似ていると告げているように思える。

ゲゲゲの女房

日曜日は文学フリマでいろんな人と話ができて楽しかった。
昨日は新宿武蔵野館鈴木卓爾監督の『ゲゲゲの女房』を観た。終わらないで欲しい映画だった。冒頭の男の子、「忍法!」とか言って壁にはりつく男の子にまず心つかまれる。鈴木監督のエロさも素晴らしかった。宮藤官九郎が「風呂を入れた。背中を流して欲しい」と言ったあとの、吹石一恵の足のアップ。しかも靴下を脱ぐ、という動作で足を露出させる演出。テレビ版は観ていないけれど、「お見合いから5日で結婚」という設定を聞かされたときにパッと頭に浮かぶ「新婚初夜はどうしたんだろう?」という素朴でがさつな疑問に繊細に答えていると思った。廊下を拭き掃除する吹石一恵の迫りくるお尻もサービス満点。そうそう、庭先で踊る妖怪の生足もどこかエロティックなんだけど、あれは『鋼』なのかもしれないとニヤニヤしてしまった。
劇中、現代の風景(調布のパルコなど)がなんの断りもなく映し出されることに、違和感をおぼえるという感想もちらほら見かけたが、ではそういう人たちは劇中の妖怪たちや、不意に動きだす漫画のコマのキャラクターにも違和感をおぼえたのだろうか? なぜ庭先で踊る妖怪を「自然」と感じ、パルコを「不自然」と感じるのだろう。あのパルコのビルは、一種の妖怪なのかもしれない、と僕などは感動してしまったのだが。
夜の暗さ(玄関の外の闇)にも感動した。何度か出て来るけれど、例えば原稿用紙の上の鬼太郎が吸血鬼エリート(霧の中のジョニー?)のギターの調べにフラフラといざなわれてしまう場面の暗闇、あれは素晴らしい。「光を当てない」という否定ではなく、積極的に墨で塗りこめることで夜が表現されていた。不意に頭の中で湯浅湾の「色は何色」が鳴り響いた。

Bootleg2号


昨日は大きな打ち合わせがあった。なぜその場に俺が……と思いながら、楽しみ。
夜は、UFOCLUBでWATER FAIと埋火のライブ。WATER FAIは初めて。大阪のバンドらしい……っていま調べてたら「TRASH-UP!!」6号に記事載ってた。チェック甘いわ、俺。轟音、ノイズ、ダンサブル。かっこいい。埋火のコーラスに包まれると体が地面から数センチ浮いてしまう。見汐さんの声、立ち姿素晴らしい。理知とエモーション。
わたしのふね

さてさて、明日は大田区産業プラザPiOにて文学フリマ。いつも、あっというまにやってくるね。今回も「Bootleg」に参加してます。テーマは「愛」。自分が最近一番興味のあることなので一生懸命書いてみました。もちろん売り子としてブースにいるので、遊びに来てください。ブースはV-01です。
文学フリマ | 小説・評論・詩歌 etc.の同人/商業作品展示即売イベント
2010-11-16

Bootleg Vol.2 Love Story

もくじ

対談:雨宮まみ×峰なゆか

恋愛映画狂想曲

(500)日のサマー』大解体!

深町秋生

耐えしのべ。親と一緒に

セックスシーン

とみさわ昭仁

殺したいほどI ♥ YOU

妻殺し映画の系譜

古澤健

恋愛やめますか?それとも人間やめますか?

トリュフォーと愛の狂人たち

速水健朗

「エマニエル夫人」は乗りもの映画である。

〜もちろん二重の意味において〜

破壊屋

ケータイ小説の愛

真魚八重子

B級ホラーアクション界のクリスチャン・ラッセン野郎

レニー・ハーリンを再発見せよ!!

功夫

Love of the DEAD

ジョージ・A・ロメロとゾンビ、愛憎の世紀

永岡ひとみ

出張!とかくめも

マトモ亭スロウストン

欽ちゃんすら救えないようなワスらの愛で地球が救えるというのか?