撮影日記


●5月10日(月)
午後から撮影。南阿佐ヶ谷。取り壊しが決まっている一軒家。高校の後輩の、お母さんの実家。家具などそのままなので、飾りの必要なく助かる。出演してくれた三人の方、おひとりはまったくの素人だったが、セリフをアドリブでお願いしたにも関わらずとてもいい感じで演じてくれた。終了後、美学校へ。合成カットの方法論について打ち合わせ。夜、西荻で「TRASH-UP!!」の面々と飲む。みんな中学生のときにランボーナイフやチェーンソーをファッションアイテムとして欲しがっていた、というような話。
●5月11日(火)
主演女優が今日から合流。本来なら今日からクランクインのはずだったのだが、俺が甘えさせてもらって、自分の出演シーンなど軽いところを先にやらせてもらったのだった。雨の中、吉祥寺のガード下で主人公と俺が、気になる女の子を見かける場面。以前『先生、夢まちがえた』に出てもらった加藤さんにチョイ役をお願いした。久我山に移動して、俺がその女の子をストーキングしている場面。それからそれを主人公が知って呆れて怒る場面。大塚に移動して、俺が全裸で女の子にインタビューする場面。初めて前張りをした。以前自主映画で全裸になったときは、その場にいた飲み友だちの女性が「前張りなんてしなくていいじゃん」と言ったので、フルチンでやったが、一応今回は仕事なので。主演の女の子が笑ってくれたのでホッとする。終了後、大塚で軽く飲む。
●5月12日(水)
先日も出てくれたチョイ役のSさんに、「フルサワ、ふざけんじゃねえ!」と怒鳴られるシーン。素晴らしかった……。クラップでは、G街ダーリンのマスターでもある石川ゆうやさんのアドリブに爆笑する。そんな口説き方あるんだ……。ゆうやさんにも説教される(役として)。『ロスト☆マイウェイ』に出てくれた安田さんもチョイ役で出てくれた。今日は、ミルチでも撮影。上半身だけ裸になる。主演の女の子も、上半身下着までにはなる。俺のテクニックではそこまで(役として)。終了後、ミルチで飲む。風が冷たかったな。
●5月13日(木)
主人公二人のデートしてる点描を都内各所で撮る。二人がキスをするたびに本気で嫉妬している自分がいる。「やめろやめろ!」と言いたいが、監督なのでグッとこらえる。主演女優のアドリブのセリフに興奮してしまう。バカか。西荻に戻って、タルタルーガで撮影。川瀬陽太さんが店長役で出てくれた。夕飯後、善福寺川そばでナイター。当日急遽見つけた場所なんだけど、けっこういいんじゃないか。夜、クラップで父と飲む。引っ越しの話を聞く。契約までは俺がやったが、撮影があるのでボウヤの子たちや西荻の友人たちに手伝ってもらったとのこと(そういえば、父はいままで自分ひとりで不動産屋に入ったことがないらしい。いつも全部誰かにやってもらっていたらしい)。手持無沙汰になってしまい(……少しは自分でやれよ)、焼酎を飲み出したら酔っ払ってしまい、寝てしまった父。目覚めたら新居にいた、との話。お前は荷物か。数年ぶりに友人のGちゃんにも会えて嬉しくなってしまう。
●5月14日(金)
三浦海岸へ。道を間違えて、予定より到着が遅れる。が、合成カットも含め無事に撮り終えることができた。昼食のとき、主演女優の子と二人だけで飯を食う。「昨日までなんにも言われないから、見放されたのかと思って不安だった」と言うので、慌ててしまう。こっちの要求以上のことを易々と出してくれるから、なにも言う必要がなかっただけなのに。ホント、今日だって見ていてこっちも泣きそうになっちゃったもん。合成の立石さん、現場にいてくれるとなごむんだよな。岸さんが友人の俳優二人を連れて来てくれる。台本を読んだ上で提案してくれたのだった。ああ、みんなありがとう。ロケハンのときには咲いていなかった大根の花がよかった。天気にも恵まれた。帰り、三浦海岸駅前で干物を買う。クラップとタルタルーガへお土産。新宿のブックファーストで『「悪」と戦う』『日本のセックス』それとバロウズ+ケルアックの本を購入。お土産を持って二軒ハシゴする。クラップでまた父と飲む。今日、ライブだったらしい。廣木光一さん、望月英明さんとひさしぶりにお会いする。

●5月15日(土)
午前中、なぜかリズムがつかめずイライラとする。午後、主演二人の子たちの芝居になってようやく乗れてくる。自分の少年時代のビデオを発見した主人公、彼が走り出すところ、よかったな。夜はいろんな意味で重い場面。実は朝から……というか昨夜から不安だった。が、主演の二人はあっけなくそれをやってのける。軽々と山を越えた二人が、遅れる俺を引っ張り上げてくれた。そんな感じ。主演の子に、「明日でおしまいですね。さみしいです」と言われ、泣きそうになってしまう。
●5月16日(日)
撮影は必ず終わる。本日も西荻で撮影。友人宅二軒と、自宅。それから路上での主人公の走り。ああ、午前中、部屋での主人公二人、よかったな。やっぱり自然光って素晴らしい。演出する俺が一番恥ずかしくなるようないちゃいちゃシーン。いつもはアドリブで俺を助けてくれる主演の二人が、「どういうふうにいちゃつけばいいんですか? 具体的に指示してください」みたいな感じ。羞恥プレイなんじゃないのか。最後は美学校で合成カット。主演の二人、なぜか出演シーンがすべて終了しても帰らず。結局、最後まで現場にいてくれる。いつもは俳優部は先に帰っちゃうから寂しいんだけど、今回はそれがなかった。いや、でもやっぱり駅で別れるとき、せつなかったな。東京駅で、スタッフ・キャストがそれぞれ「僕、こっちなんで」と帰っていき、俺と照明の玉川二人になり、玉川も新宿で俺と別れ、最後に俺は一人でクラップに飲みに行った。マスターのたかさんが、「タケシの現場、ちらっと見たけど、いい感じにまとまってて感心したよ」と言ってくれて、そんなこと言われたらますますせつなくなっちゃうよ。