撮影が始まった

こないだ、道端でセミの死体を見つけた。とはいえ、その写真をアップしても、「なんでこの季節に……」と動揺した思いは伝わらないだろうな。

●5月4日(火)
吉祥寺で衣裳用のTシャツを買う。みどりの日なので動物園は入場無料。大勢の親子連れやカップルでにぎわっていた。
●5月5日(水)
予定表をPに出してもらい(今回、準備スタッフはPと俺しかいない……)、やりとりして改訂。そして固まったところで、ロケ地の責任者に俺が電話連絡をして確約を貰う。夕方、明日撮影する場所へ自転車で行き、ひとりでロケハン。
●5月6日(木)
クランクイン。なんだけど、その前に父のアパートの契約のために不動産屋へ。昼食後、久我山へ。シーン1から。「自主映画を撮っているフルサワたち」というシーン。今回、僕は主演ではないけれど、大きい役で出演。場面によってはカメラもまわす。監督・撮影・出演・その他、だ。軽いシーンでも、もはやわかったふりができないほどテンパる。楽しい。撮影後、渋谷で打ち合わせ。
●5月7日(金)
午前中、CGチームと一緒に三浦海岸へ。合成をふまえた、ロケハン。一緒にカット割りを考える。毎日少しずつ自分がこれから作ろうとしている映画の輪郭が見えてくる。15時から渋谷の会議室でキシケンさん(プロデューサー役)とフルサワのやりとりの場面。最後、キレたフルサワがプロデューサーに詰め寄る芝居、気持ちが入りすぎて膝が震える。画はあとでチェックするが、チェックしなくてもいいや、と思うくらい、山田さんは俺の意図以上の画を撮ってくれている。さて、俺は監督として今回なにをやっているのだろう。

●5月8日(土)
東八道路で車の走りを撮る。主人公を助手席に乗せて、俺が運転しながら芝居する。なかなか難しいね。それを終えて、新宿G街のバー・ダーリンへ。高橋ヨシキさん(本人役)に、フルサワが説教される、という場面。「フルサワの映画にはおっぱいが足りない!」「映画監督のくせに素人になにが面白いのか聞いたりするな!」と、いつも言われていることを言ってもらう(嘘ですよ!)。たまたま近所にいらした飲み友だちのKさんにも急遽出演してもらう。みんなありがとう! 夕方から主演女優の衣裳合わせ。早く撮影がしたい!
●5月9日(日)
西荻で撮影。いつも飲みに行っているCLOPCLOPで。スタッフが壁に貼ってある俺の映画のポスターを見てニヤニヤしている。ほっとけ。主人公のK君、少しなにかつかんだような気もする。とはいえ、今日の演技賞はチョイ役で出てくれた女優のSさん。「やる気のない素人女優」という設定を、笑いをこらえながら素晴らしく演じてくれた。その場で説明した内容をすんなり把握して、こっちの期待を上回るアドリブで驚かせてくれた。その上、スタッフ一同、「本気なのではないか……」と焦るほどの迫真の演技も見せてくれた……らしい。「らしい」というのは、そのとき、俺はロングで演技をしていたから直接目にすることができなかった。今回、俺は「放置」という演出スタイルを身につけた気がする。午後は、後日使わせてもらう部屋の飾りこみ。ウチから飾り用のあれこれを持ち出す。ホント、自主映画だよな……。