お疲れさま

午前中、下北沢で髪を切る。いつも切ってもらってるWさんの息子が通っている幼稚園の一部男子のあいだでは、ウルヴァリンごっこが流行っているとのこと。手にボール紙の爪をつけてるんだって。
髪を切るときにしか下北には来ないので、マジスパへ行く。チキンの涅槃、トッピングにチーズ。スープカレーマジスパが旨い。
帰宅して仕事。
井上夢人おかしな二人』読了。創作の素人がいかにしてプロの作家になるか、という物語だから美学校生はやっぱり読んだほうがいいね。誤読もするだろうけど、とにかく下書き=おしゃべりがいかに作品作りにとって大事なのかを感じればいいと思う。
数年ぶりに読みなおしてこの本が一篇の「お話」として「うまいなぁ」と思ったのは、井上の妻の描写。脇役なんだけど、実は重要な登場人物。旦那である井上はロクな稼ぎも家に持ってこないで(アルバイトとかで糊口をしのいでいる)小説で一発あてることだけを考えている。娘もいるっていうのに。しかもようやく見つけた職場を、「合わない」という理由ですぐにやめてしまう。その直前には定期収入をあてにしてパソコンを買ってしまっているのに。で、その直後、江戸川乱歩賞に落選して放心している井上に向かって、次のように言う。

「あたし、がっかりした」
「…………」
「ちがうの。落ちたことで、がっかりしたんじゃないの。徳さんと、次にどういう小説を書くかって話をするんだろうって思ってたんだもの。ただ、ぶすっとしてるだけで、なんなの? がっかりしたわね」
「……パソコンまで買っちゃった」
「え?」
僕は部屋の隅に置いてある図体の大きなパソコンに目をやった。
「月賦をどうやって払おうか……」
「なに、それ? そういうことしか、考えられないワケ?」
「…………」

遠回しな嫁自慢なんだけど。でも、嫁さんのでっかさが伝わってくるし、そういう嫁を自慢したい気持ちもよくわかる。
そして、この本のラスト、ついに「岡嶋二人」という二人組の作家が「解散」したあとにも、この嫁が登場する。「お話」としての結構としてもうまいけど、実は作家が一人(この場合には二人)だけで成立しているわけじゃないことが伝わってくる。
夕飯は、蕪と豚ひき肉の煮もの。初めて作ったけど、おいしくできた。
夜、最終日の傑力珍怪映画祭へ。勝手に行ったのに、強引に挨拶させてもらった。打ち上げ、少しだけ参加して帰宅。『地獄に堕ちたシェイクスピア』、奔放なふりをしてしっかり真面目な映画だった。

おかしな二人―岡嶋二人盛衰記 (講談社文庫)
井上 夢人
講談社
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