ゆっくりとした歩みで


●4月13日(火)
前夜、父がクラップの階段で転倒した。幸い店内に俺が残っていたので、家まで送る。昼過ぎ会いに行ってみると、背中が痛いとぼやいている。心配だ。その後、不動産屋へ行き、物件をまわる。別の不動産屋からは返事待ち。
●4月14日(水)
渋谷で打ち合わせ。プロットの感想およびタイトル案のブレスト。下北沢のコミューンでやってるミキジさんのネストへ行く。友だちのうちに遊びに行ってなかなか帰れないような気持ちになった。『幽幻道士2』のドーナツ盤の他、持ってても困るものを数点購入。幸せ。夜、高円寺で『Mっぽい3』の打ち合わせ。そういえば前回はちゃんと打ち合わせしたよね、と反省して。盛り上がって「これでいいよね」というところで遅れてきたメンバーに疑問を呈され、それで再び思考して、更にいいアイディアに辿り着く。簡単な答えに飛びつかない、というのは頭でわかっていても、なかなか実行できない。一人でやっていたらなおさら。その後、9期生と合流して飲む。
●4月15日(木)
昼、五反田へ。屑山さんとYさんと三人で飯を食い、その後『ハロウィン2』の試写へ。『1』でのストレス(名作のリメイクという重圧と責任)を振り払った、軽やかな映画。夜、レバニラを作る。
●4月16日(金)
今日は西荻で撮影。駅から少しずつ移動して、途中途中で撮影。しかしこの寒さはなんだ。寒さは撮影の敵だ。前回と違って、さすがに撮る内容は決まっているので、段取りは問題ない。が、やはり芝居のテンションはそうそう簡単に上がらないから、午前中で2シーン撮るので精いっぱい。午後は合成もからむし、芝居は難しいし、そしてついに雨も降って来るしで、うまいこといかない。でもスタッフ・キャストは、「撮り直しましょう」と言ってくれる。やさしいな。というか、いいもの作ろうというところでブレがないので、安心して甘えられる。その後、ウチで室内シーンを撮る。今日は主演の川口が朝からいいセリフを連発してたが(厳密なシナリオがなく、アドリブでやってる)、今日のクライマックスも川口のおかげで演出できた。そして映画全体の方向も見えた気がする。こないだの渡辺といい、主演二人の力は大きい。撮影後、駅前で飲む。で、店を出たらみぞれが降っていた。ニュースでは、41年ぶりの遅い雪だと言っていた。
●4月17日(土)
昨日撮った素材の、合成カットの部分だけテスト編集。なかなか思ったようにはいかない。夕方、「Bootleg」の同人たちと飲み会。西荻に戻って来てクラップへ行く。たまたまだが、父のライブだった。終了後、調子を聞いてみたら、肋骨にひびが入っていたとのこと。鎮痛剤を飲みながら演奏したらしい。笑ってしまった。
●4月18日(日)
家人と一緒にピカデリーで『第9地区』を観る。家でBDで観ていたときに、後半のロボットシーンだけ見せたら「面白そう」と言うので一緒に劇場で観ることにしたのだが、帰り道ずっと「騙された。あんなにグロいなんて」と文句を言っていた。が、面白いのに変わりはないようだったので、問題はない。家で観たときは字幕なしだったのでセリフのニュアンスがわからなかったが、主人公含め人間が卑劣で馬鹿ばかりという印象は変わらず、宇宙人のほうがずっと愛嬌もあるし、礼儀正しいし、高潔だなと思った。ドラマとしては決定的な瞬間が常に主人公の決断と無縁のところで起きていて、それは普通だったら駄目だと思うんだけど、「人間はどうしようもない連中ばっかり」という全体の印象を思うと、成功しているんだと思う。最後まで人間がヒーローになる瞬間を、徹底的に回避している(いろいろびっくりしたけど、最後の最後の対決ですら、主人公が主人公であることに失敗してしまっている!)。もちろん、それがどこまで意図的なのかはわからないけれど、無意識であれ、結果として宇宙人の印象がアップしてるからいいんじゃないか、と俺は支持する。