試写

脚本を一本読んで、自分の作業に備える。しかし他人の書いたホンを読むと勉強になる。
午後、映画美学校で『あんにょん由美香』の試写。マスコミ向け試写でありながら初号というヘンテコな試写。でもビデオ時代とはそういうものなのかもしれない。『デッドクルーズ』も似たような状況だった。安里監督の『デッドゴーランド』なんて、その日の午前中にMAをぎりぎりで終わらせて駆け込みで試写だったもんな。
松江哲明監督の映画は不思議な感じがする。「監督」なのに、いろんなことをコントロールできてない。逆にコントロールされてしまったりする。で、そのことに苛立つのではなく、「ニヒヒヒヒ」とあの独特の笑いでそれを楽しんでいる。自分で行く道選んだはずなのに、平気で道を踏み外して、「じゃあこっち行きましょう」と平然と藪に突っ込んでいく。おかしいよな。俺が知ってる松江君はドSなんだけど、松江監督はどこかMっぽい。人を振り回すんじゃなくて、振り回されて、どうして楽しいんだろう……と思うんだけど、『あんにょん由美香』を観たら、「ああ、松江監督は永遠の修行の道を選ぶ苦行の人なんだけど、それを苦行だと気づかない希有な才能の持ち主なんだな」と羨ましく思った。こっちがひーこらひーこら愚痴をこぼしながら上っている山道を、奴は歯を食いしばり過ぎて歯茎から血なんか流してる癖に「楽しいっすね、修行」とか言ってるんだよな。
松江監督の「これしかない!」という思い(思いこみ?)がストレートに伝わってくる、まるでストレートじゃないヘンテコな映画だった。
夕飯は西荻南口の「とやじ」。とにかく肉とキムチが食いたかった。帰宅してから、「あ、あの映画のせいだ」と思った。
眠くなりながら、仕事。