『レスラー』で嗚咽

吉祥寺バウスシアターで『レスラー』を観た。思わず嗚咽を漏らしてしまった。いろいろな理由があるけれど、個人的には父を始めとする身近なミュージシャンのことを思い出してしまった。
いい年をして飲み屋で殴り合いの喧嘩をしたり、いい年をしてハッパ吸って逮捕されたり、いい年をして若い女の子とセックスしたり、いい年をして夢を語ったり(あ、ウチの親父は小心者なので逮捕はないみたい)。
子どものときには、ばかばかしくてつきあってられないと思っていた。考えてもみてよ。家にはあまり帰ってこないし、帰ってくれば酒臭いし、家賃は入れないし、しょっちゅう夫婦喧嘩してるし、そのくせ外ではミュージシャンとしてちやほやされてる。
映画の中で、ミッキー・ロークが娘に会いに行くところ。俺なんて、ばかばかしくて泣いちゃうよ。心臓発作起こしてレスラーを続けられなくて寂しい? ああ、わかるよ。すげえわかる。
俺が結婚をすると決めたとき。とりあえず古澤家で食事をしたんだよ。まあ、ウチの両親は俺が高校生のときに離婚をしているんだよね。でも、仲が悪いわけじゃないから、たまにみんな集まって食事したりする。そんときも、俺の嫁さんも一緒に飯食って飲んでたんだけど、酔っ払ってきたウチの父親が「こいつ(俺ね)も結婚するから、俺たちももう一回結婚するか」と元奥さんを口説き始めた。で、すぐさま「ありえない」って断られてた。爆笑してしまったけど、お袋にしたら冗談にできなかったみたい。どんだけ苦しめられたんだ!って。
そんなことがあっても、まあ、死ぬまで肉親は肉親なので、つきあわざるを得ないんだけど、『レスラー』を観て、俺はゲラゲラ笑いながら嗚咽を漏らしてしまったのだった。